平昌五輪の男子フィギュアスケートは、2014年ソチ五輪覇者の羽生結弦(23)が右足首を痛めて“ぶっつけ本番”となるため不安を抱えている一方、伸び盛りで五輪初出場の宇野昌磨(20)に金メダル獲得の期待が高まっている。宇野が表彰台の一番高い所に上ることを確信しているのが、90歳の祖父で洋画家の藤雄さんだ。昨年10月から3カ月かけて、孫が優勝する“予知絵”を完成させ、「昌磨は必ず優勝しますよ。どうしてもそう感じる」。その貴重な一枚を夕刊フジが一足早く独占公開する。(飯田絵美)
宇野は平昌五輪の前哨戦となった「四大陸選手権」のフリー(27日=台北)で、冒頭の4回転ループが回転不足の判定を受け、続く4回転フリップは転倒。SPとの合計で金博洋(20)=中国=の後塵を拝し2位に終わった。
それでも今季鬼門となっていた後半の4回転トウループを初めて2本そろえ、「後半のジャンプを跳べてほっとしている。自信を持って、これまでやってきたことを続けていきたい」と金メダル獲得へ手応えも口にした。
「私は去年1年間、昌磨に『試合のたびに毎回転ばなきゃダメだ』と言ってきたんです。『なぜ転んだのか?』ということを本人が追求し、その先転ばないようになるから。『いっぱい転んで会得しなさい』と。実際、フランス(11月、GPシリーズ フランス杯)でも転んだ。名古屋(12月、GPファイナル)でも転んだ。そして年明けの今回も転んだ。私は『大成功!』と思っています」
そう断言する藤雄さんは、3月15日に91回目の誕生日を迎える。愛知県犬山市在住で、名古屋を拠点としている昌磨とは離れて暮らしているが、芸術的感性を持つ者同士、特別な思いを抱いてきた。
転び続けてきたからこそ、平昌では転ばずに最高の演技ができる-という一風変わった考えの奥には、芸術家としての信念がある。
「絵画もフィギュアも芸術です。芸術家になりたい人は、感性を磨いたり、発見したりすることが必要になる。『よし、ひとつ描いてみようか』なんていう気軽な感覚では、とうてい芸術の域には達しない。体ごとぶつかっていかないとダメです」と熱弁を振るう。
「人々がゴッホの絵に感動するのは、あそこに狂気があるから。狂気をキャンバスにぶつけた。だから人の心を打つ」とも。芸術家は自分自身との真剣勝負を求められるのだ。
20歳から洋画家となり、その名を知られる藤雄さんは、過去にカンヌ国際展グランプリなど数々の賞を受賞。プラハ国立美術館、タヒチのゴーギャン美術館などに作品が収蔵されている。英国王立芸術協会名誉会員で、昌磨の父、宏樹さんの父である。
昨年10月から、ひとあし早く昌磨の“金メダル獲得記念”として1枚の絵を描き始め、年末に完成させた。“予知夢”ならぬ“予知絵”というわけだ。
タイトルは『氷上の舞』。中央には白い衣装を身につけた昌磨が氷上でポーズを取り、周囲には舞妓(まいこ)さんを華やかに配している。その奥からは、日の丸を持つたくさんのファンが声援を送っている。
「昌磨1人を描くのではなく、展示にもたえうる作品にするために、日本の文化の象徴として舞妓さんも描いた」と説明する。
「優勝記念でこれを描いた。こんな絵を描けるのは僕しかいないよ。五輪で金メダルを目指している孫を持つ画家、日本にも、世界にも他に1人もおらん」という自信作。見事昌磨が優勝したときには、この絵を展覧会で発表した上で、本人にプレゼントする意向。万が一「優勝しなかったら、発表しないし、あげんわ」とおどける。
90歳にして昨年もドバイ、ドイツ、フランスの展覧会に出品した藤雄画伯は、「僕は5年前に描いた絵も毎日手直しをします。だから、いつまでも飽きることがないし発見がある。昌磨にも、転び抜いて五輪に備えてほしいと思っていました。さまざまな厳しさがある中、それを実行したのは偉い」と五輪本番直前まで難易度の高いジャンプに挑んできた孫のチャレンジ精神を褒め上げた。
昌磨自身、本番へ向けて「(あとは)ジャンプの成功率を上げるのと、質を良くすること。表現は自分に染みついていると思います」と自信をうかがわせている。
ソース:https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180131-00000018-ykf-spo