世界のフィギュア界に衝撃が走った。ブルガリアで開催されていたフィギュアの世界ジュニア選手権でロシアのアレクサンドラ・トゥルソワ(13)がフリーで4回転を2度成功させたのだ。
フリーの冒頭に4回転サルコーを成功させると、続く4回転トゥループも着氷。基礎点が1.1倍となる後半には、平昌五輪の金メダリスト、アリーナ・ザギトワ(15、ロシア)が武器とする難易度の高い3回転ルッツ+3回転ループの連続ジャンプまで決めて歴代5位となる計225.52点の高得点で優勝した。
女子の公式戦での4回転ジャンプの成功は、2002年の安藤美姫の4回転サルコー以来。しかもサルコーにはGOEが2.00点加算された。脅威の13歳である。
元全日本2位で現在福岡で後進の指導を行っている中庭健介氏に映像を分析してもらったが、
「正直、驚きました。ジュニアGPシリーズの初戦から4回転サルコウに挑戦していましたが、まだ未完成で回転不足を取られていました。昨年12月のGPファイナルでも失敗していました。それがたった2ヶ月で、完璧にサルコーだけでなくトゥループを成功させるまでに急激に成長していたのです。信じられません」と驚きの声をあげた。
そのトゥルソワの4回転は平昌五輪金メダリストの羽生結弦にソックリのスタイルだという。
「彼女の4回転ジャンプは、技術的に羽生選手に似た理想的な4回転ジャンプです。ジャンプへの入り(エントランス)がまず似ています。サルコーは強引に飛んだイメージですが、トゥループへの入りは羽生選手のように美しい。なぜ、そういうジャンプに見えるかというと、トゥループは、左足のトゥを使って飛ぶジャンプですが、まずは、右足のエッジを滑らせます。その右足が非常に滑らかに加速されています。そこからトゥをつきにいけている部分と、身体全体が前後に長く伸びながら、ジャンプへの準備をして、この時、身体にひねりが生まれます。回転に必要なタメを生み出す事ができています。この2つの特徴的な身体の使い方と、雰囲気も含めて羽生選手の4回転トゥループに非常によく似ているのです」
ジャンプに入るエントランスには、大きく分けて片足で3の字を描く「スリーターン」と両足で乗り換えてターンする「モホークターン」の2種類があり、それぞれをジャンプによって使い分ける選手や、すべて同じ種類にまとめている選手などがいるが、羽生は、4回転トゥループは「スリーターン」、4回転サルコーには「モホークターン」を使う。今回、トゥルソワも、4回転トゥループには「スリーターン」、サルコーには「モホークターン」を使った。まったく同じだ。
「スリーターンは、回転の勢いや流れがつくりやすいのですが、身体が回りすぎて、パンク(回転が1回転などになってしまう失敗)が多くなる傾向があり、またモホークターンは選手が振み切る時に身体が回っていくのをコントロールしやすいですが、勢いや流れがつくりにくいのです。それぞれに長短の特徴があり、選手とコーチが試行錯誤を繰り返しながら、選択をしていきます」(中庭氏)という。
そもそも、なぜトゥルソワは2種類もの4回転ジャンプを成功させることができたのか。
中庭氏は、「まだ13歳で体が軽く、細いのでパワーがなくとも身体の巧みな動かし方や、滑りの質により、速い回転が可能になっているからはではないでしょうか。さらには4回転ジャンプを心から成功したいという思いがあることが大きいです」という。