120: 氷上の名無しさん 2018/09/12(水) 11:46:05.98
やりきった。出しきった。
達成感が、心を満たしていく。今年2月、平昌冬季五輪で、フリーの演技を終え、宿舎に帰ったときの心境を羽生結弦(23)は明かす。
「いい意味で『もう、いいかな』とは思っていました。やるべきことはやったなと思いましたし、金メダルをとって、部屋に戻って、一番最初に感じたことは、『ああ、今までがんばってきてよかったな』っていうことだったので」
羽生は練習拠点にしているカナダ・トロントで8月30日に練習を公開した。その際、本誌の単独インタビューにも答え、平昌五輪後から今に至るまでの心境を赤裸々に語った。
そう、羽生は本人が語るように、がんばってきた。練習拠点だったリンクの閉鎖や、東日本大震災もあった。つらい出来事に直面しても、脇目も振らず滑ってきた。
グランプリ(GP)ファイナルは、2013~16年まで4連覇し、世界選手権は14 年と17年の2度制した。全日本選手権も12~15年の4連覇。ショートプログラム(SP)は17年オータム・クラシックで112.72点、フリースケーティングは17年世界選手権で223.20点、総得点は15年GPファイナルで330.43点と、いずれも歴代最高得点を記録した。そして、ソチ、平昌の五輪連覇だ。栄光の限りを、手にした。
平昌五輪後、痛めていた右足首の治療のため、リンクに上がれない時期が1カ月ほどあった。スケートから離れたわずかな時間が、羽生の心に変化を生じさせる。達成感以外の思いが、むくむくとわいてきた。
「オリンピックが終わって、1カ月間、スケートができない状態だったころに、ずっと考えていて。もう、勝つとか負けるとか、そういったものに固執しすぎる必要はないのかなと思った。同時に、自分のために滑ってもいいかなと思って」
再び歩み始めると決めたとき、背中を強く押してくれる力が必要だった。羽生はそれを、「あこがれ」に求めた。
今季のフリーの曲、「Origin(オリジン)」はエドウィン・マートン作曲の「アート・オン・アイス」をベースにした。この曲は、羽生にとって忘れられない一曲でもある。永遠の目標、ロシアのエフゲニー・プルシェンコ(35)が、03~04年シーズン、フリーのプログラム「ニジンスキーに捧ぐ」で使っていた曲だからだ。
「オリジンには『起源』『始まり』という意味を持たせたかった。プルシェンコさんのことは、ずっと、こういうふうになりたいなと思いながら見ていて。小さいころからやりたいなと思っていました。『ニジンスキー』を滑っているときの圧倒的なオーラ、ポーズ。音に合わせている動き、ジャンプ。すごくひかれた記憶があります」
SPはラウル・ディ・ブラシオ作曲の「秋によせて」に決めた。これも米国のジョニー・ウィアー(34)が04~06年シーズンのフリーで使用していた曲だ。
「衝撃的だったのは、男性だからこそ出せる中性的な美しさ。ジャンプを降りたときの流れや、姿勢。一つひとつの丁寧さ。やっぱり一番はランディングの美しさかな。そこにすごくひかれて、自分もこういうふうに跳びたいな、滑りたいなって」
当然、オリジナルの要素を入れて再構成するにしても、プルシェンコとウィアーを象徴するプログラムであるために、躊躇する気持ちがなかったわけでもない。
しかし、とりこになった小学生のときのまま、自分に正直であろうとした。2人には4月、東京都内でのアイスショー、「コンティニューズ・ウィズ・ウィングス」で直接使用を申し出て、快諾された。
「あのころの自分は、プルシェンコさんやウィアーさんの演技を見て、『この曲、使いたいな』と思いながら滑っていました。また、曲を聴きながら、マネをしたり、楽しんだりしていた自分がいた。初心に帰って、スケートを楽しんで、スケートを自分のためにやるということを感じながら滑れるかな、ということを思いました」
そしてもう一つ、羽生の意識をリンクへと向けさせたものがある。ジャンプだ。
世界で誰も成し遂げていない「4回転アクセル」の成功を目指す。もともと、トリプルアクセルには絶大な自信を持っている。高い浮上、伸びやかな跳躍は、トリプルアクセルの理想像といっていい。
「アクセルは、僕のモチベーション。自分の根源にある。小学校低学年のときに、1時間の練習でも、45分くらいはアクセルの練習しかやっていなかったので。その、アクセルへの思い、難しさも感じながら、降りたときの達成感がスケートを好きにさせていった大きな要因でした」
トーループ、サルコー、ループ、フリップ、ルッツ、そしてアクセル。6種類あるジャンプで、ルッツまでは4回転に到達した。
羽生自身、4回転ループを世界で最初に、国際スケート連盟(ISU)公認の大会である16年のオータム・クラシックで跳び、第1号として認められている。それでも、アクセルだけは譲れない。
「練習は、毎日はできなくて。足首の不安はそんなにないんですけど、やはり衝撃はものすごく大きなジャンプなので、体調をみながらやっています。思うのは、やっぱり、アクセルが好きだな、と。楽しいですね、やってて。跳べるまでの過程だとか、そういったものも一つひとつ楽しみながら、すごく頭を使いながら練習しています」
練習拠点にしているカナダ・トロントのクリケットクラブでは、実績はもちろん、年齢的にもクラブの長男的存在になった。日々の練習の最後、クールダウンの滑走ではブライアン・オーサー・コーチ(56)や、トレーシー・ウィルソン・コーチ(56)に続き、他の選手たちを導くように先頭に立つ。
「今、自分が成績としても、トップでいなくてはいけないんです。でもある意味、仙台で練習しているときもそうだったんですね。年齢は上じゃなかったんですけど、一番お手本にならなくてはいけないような状況にあったので」
使う曲も、挑むジャンプも、練習環境も、ただ、舞い、跳び、滑るのが楽しかった時代へと戻った。また今シーズンから採点方式が変更されることで、過去の偉大な得点は「歴史的記録」と位置づけられ、一からのスタートとなった。
それらはまさに、新しい羽生結弦の誕生を、意味するのかもしれない。
「今まで、自分のスケートをしなくちゃいけない、期待に応えなくてはいけない、結果を出さなくてはいけないって、プレッシャーがすごくあった。今、それが外れていて。自分がスケートを始めたきっかけというのは、やっぱり、楽しかったから。スケートを滑って、自分の夢を追いかけて、その過程が楽しかったから」
羽生はいつも、誰かのためにがんばってきた。その姿に、我々は魅了された。これからは、自分のためにがんばる。その演技にも我々はまた、心を打たれるのだろう。(朝日新聞スポーツ部・山下弘展)
写真カラーだね
保存した
後藤さんの次も男性記者なんだね
再び歩み始めると決めたとき、背中を強く押してくれる力が必要だった。羽生はそれを、「あこがれ」に求めた。
目新しい内容ではないけど羽生の言葉で伝わってくるし
いい文章書く記者さん
写真保存できないね
横からだけどありがとう!
今年からこの山下記者が担当なのかね?
良い記事で読みやすかった
デジタルweb担当のつぶやきがじわる方が担当になるんじゃなかったんだね
感じ良いよね
これジョニーとプルにも読んでもらいたい
http://rosie.5ch.net/test/read.cgi/nanmin/1536714834/