★湯浅教授、王者なら構成落とすな
連覇を狙う羽生にとって、ライバルが追いつけないような演技をするのが役目になる。厳しいことを言うが、演技構成のレベルを落として勝とうというのは王者らしくない。4回転ジャンプは減らしてほしくない。
負傷からの復帰戦になる。回復の度合いによってできない技もあるだろう。だが、五輪に出場するからには全力で臨む責任がある。「オレに勝ってみろ」という心構えで、追う者の前に立ちはだかってもらいたい。
私は、2004年アテネ五輪の陸上男子ハンマー投げで金メダルを獲得した室伏広治(現20年東京五輪・パラリンピック組織委員会スポーツディレクター)の指導に携わった。彼は、かつて20連覇を飾った16年の日本選手権で12位に沈み引退を表明した。確かに衰えはあったが、晩年のトレーニングも全力だった。手を抜くようなことは絶対にしない。だからこそ、室伏に勝った者の喜びはひとしおだったはずだ。
仙台市出身の羽生は東日本大震災を乗り越えて努力を積み重ねてきた。彼は演技が終わると苦しい顔を見せる。死力を尽くしたのだと自然と分かる。かつてジャンプの分析を担当した10年バンクーバー五輪銀メダリストの浅田真央(17年に現役引退)は、演技後も笑顔を貫いたが、あれが一番つらかったと言っていた。体力の激しい消耗と戦いながら優雅な舞いを競うのが「アートスポーツ」の魅力の一つなのだ。
選手によくかける言葉がある。「相手に勝とうと思うな。失敗をするな」。それがフィギュアで勝つ秘訣(ひけつ)。理屈だけを語れば、他の選手が失敗し、自分がミスをしなければ勝てる。羽生にとって、極力4回転を回避するのも選択肢なのかもしれないが、王者としてできる限りの演技を追求してもらいたい。(中京大教授)
ソース:http://www.sanspo.com/sports/news/20180125/fgr18012511000006-n2.html
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