2016年シーズンの公演を終えて町田樹が公式サイト上でコメントを公開

今年度もAtelier t.e.r.mの総力をもって制作した2つの作品「あなたに逢いたくて」および「Ave Maria by Chris Botti」を発表してきましたが、無事に今季すべての公演を終えることができました。

まずは、両作品を披露する場をご提供下さいましたPrince Ice World 2016横浜公演・東京公演およびJapan Open 2016、Carnival on Ice 2016の各主催者の皆様に心より感謝を申し上げます。またすべての公演において音響、照明、放送等の舞台スタッフの方々が協力して下さったおかげで、作品世界を十全に表すことができました。作品を舞台裏から支えて下さいましたすべてのスタッフの皆様に、深く御礼申し上げます。

そして何よりも、今年の二つの新たな試み—— ボーカル曲とフィギュアスケートの関係を追究した「あなたに逢いたくて」、既成ルールという一元的な価値観を離れ、”patinage artistique”の可能性を追求した「Ave Maria by Chris Botti」を心から受け取って下さいました多くの皆さまに、最大限の感謝を申し上げます。

　
ところで、先日開催されたCarnival on Ice 2016のフィナーレでは、マイケル・ジャクソン（Michael Joseph Jackson, 1958-2009）の「Heal The World」（1991年）が、さいたまスーパーアリーナの雄大な舞台空間をあたたかく包み込みました。この曲がフィナーレで使用されると知ったときに、公演主宰者の意図が”Peace & Love”であると私は考え、マイケルのミュージックビデオを繰り返し観ました。その中で一瞬映る、少女が兵士に向かって小さな白い花を差し出している場面、また子どもたちが蝋燭の明かりを持ち寄っている場面は、深く印象に残りました。そして、それはマイケル・ジャクソンが曲に込めた「願い」であると思い至ったとき、私の脳裏には「向日葵」の衣裳コーディネートが浮かびました。

—— たとえ暗闇が辺りを覆ったとしても、天上に向かって凛とした佇まいを見せている一輪の向日葵の花—— 戦後の貧しい時代にあって雑誌を通じて少女たちに夢を送り届け続けた画家・中原淳一（1913-1983）が描いたその向日葵。2011年の大震災の折にも多くの人々が「願い」を託したその花に、私もまたひそかな思いを込めた次第です。

これからもスケートを通じて繋がっていくめぐり逢いと、一期一会の公演を大事にしていきたいと思います。

町田樹公式サイト
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